多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

福岡の婦人科でピルや、がん検診は大濠パーククリニックです。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)

生殖可能年齢女性の5~8%でみられる。卵巣の表面が硬くなり、卵子が排卵しにくくなる疾患で、排卵されない卵胞は卵巣にとどまるため、超音波検査で多数の卵胞(嚢胞)を認める。年齢とともに卵巣機能が低下してくると、正常の状態になってくる。

 <診断基準(Ⅰ~Ⅲのすべてを満たす場合)> 2007年日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会より

 月経異常(無月経・稀発月経・無排卵周期症)

 多嚢胞性卵巣(少なくとも一方の卵巣で2~9mmの小卵胞が10個以上)

 血中男性ホルモン高値 またはLH基礎値(月経2-5日)高値(7mIU/ml以上)かつFSH基礎値正常

※採血は1cm以上の卵胞が存在しないことを確認の上で行う。また、月経または消退出血から10日目までの時期は高LHの検出率が低いことに留意する。

スパックーS による測定ではLH7mIU/ml(正常女性の平均値+1x標準偏差)かつLHFSH

<原因> 

脳下垂体から分泌されるLH(黄体ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)のバランスが崩れて、LHばかりが過剰分泌されることによって排卵が障害される。

PCOSの約30%ではインスリン抵抗性があるといわれ、男性ホルモンが増加し卵胞の発育を抑制し、卵巣の外側の膜(白膜)を厚くすることによって排卵を妨げる。

<症状> 

  • 無月経や月経不順
  • 妊娠しにくくなる
  • にきび
  • 多毛
  • 肥満
  • 糖代謝異常

 

<治療>

妊娠希望がない場合 毎月月経がない場合

a)若年〜性成熟期女性  

子宮体癌のリスクを回避するために以下の方法で少なくとも3ヵ月ごとに消退出血を起こす。3~6周期行なった後に経過観察

・黄体ホルモン(ホルムストルム療法 )子宮体癌、不正出血予防

・Kaufmann療法 子宮体癌、不正出血予防

用量ピル 多毛、ニキビ治療

・柴苓湯

b)性成熟期以降

2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患、脂肪肝などの予防。減量等

妊娠希望の場合

・排卵誘発剤。クロミフェン(経口薬)を内服すると約50%が排卵

無効の場合はFSH製剤を注射。

・腹腔鏡下卵巣多孔術 効果は半年~1年ほど

・耐糖能異常(インスリン抵抗性)がある場合、糖尿病薬のメトフォルミン(メルビン等))、減量(5%)

PCOSの既往があると,妊娠してない女性に比べ45歳以降の高血圧のリスクが約1.8倍高くなる,45歳未満の糖尿病のリスクが約3倍高くなるという報告がある。肥満例では,基本的にBMI25以下を目標に減量を指導