PMS
月経前症候群
PMS補足
PMS見出し
そもそもPMS(月経前症候群)って???
定義・・・
『月経前3〜10日間の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの』
※ 日本では約7-8割弱の人が何らかの悩みを自覚していると言われています。
以前は「月経前症候群」という言葉の認知は低かったですが、今は徐々に存在を知られており、患者さんがもしかしたらPMSかもとご自身で感じて来院されることも少なくありません。
月経前症候群の特徴としては、
- いつも月経が始まる3-14日前に症状が出現。
- 月経が始まると症状は落ち着く、なくなることも。
といったものがあります。
PMSの影響を受ける人の割合
月経前症候群(PMS)は、月経前に身体的および精神的な不調を引き起こす症状群であり、女性の多くが何らかの形で経験しています。以下は、PMSの重症度別の割合に関するデータです:
- 日本国内では、20~49歳の女性のうち約5.3%が中等症から重症のPMSに該当するとされています。この割合は約20人に1人に相当します。
- 別の調査では、中等症以上のPMSが17.5%、重症が20.4%と報告されており、調査方法や対象者によって異なる結果が示されています。
- PMSの症状が日常生活に支障をきたすほど重いと感じる女性は、全体の約4人に1人(25%)に上るとの報告もあります。
PMDDの影響を受ける人の割合
月経前不快気分障害(PMDD)は、PMSの中でも特に重い症状を伴い、精神的な不調が顕著な状態を指します。
- 日本では、PMDDに該当する女性は全体の約1.2%とされています。
- 海外の調査では、PMDDの有病率は2~8%とされており、日本よりも高い割合が報告されています。
原因は何???
PMSの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、主に以下の要因が関与していると考えられています:
- ホルモンの変動:特に排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の増減が、体内や脳内で様々な影響を及ぼしていると考えられています。
- セロトニンの変動:脳内の神経伝達物質であるセロトニンのレベルが、ホルモンの変動に影響を受けて変化することで、気分の変動や身体症状を引き起こす可能性があります。
- 遺伝的要因:家族歴がPMSのリスク因子となる可能性が指摘されています。
- 環境要因:ストレス、食生活、運動不足などの生活習慣も症状の発現や重症度に影響を与える可能性があります。
- 心理社会的要因:社会的ストレスや心理的な負担も症状を悪化させる要因となり得ます。
具体的にどんな症状がある?
定義通り、多種多様な症状ですが、以下のような症状が当てはまります。
身体的症状
- 胸の張りや痛み:乳房の腫れや痛みを感じる
- お腹の張り:腹部が膨満感を感じたり、ガスがたまりやすくなったりする
- 頭痛:月経前に頭痛やめまいを感じる
- 手足のむくみ:特に下肢や顔面にむくみを感じる
- 関節痛、筋肉痛:体のあちこちに痛みを感じる
- 体重増加:一時的な水分貯留により、体重が増加する
- 肌荒れ:ニキビなどの肌トラブルが増える
- 便秘や下痢:排便習慣が乱れる
- 食欲の変化:特に甘いものや塩辛いものへの欲求が強くなる
精神的症状
- イライラ:些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする
- 不安:漠然とした不安感や心配事が増える
- うつ気分:気分が落ち込んだり、自己評価が低下したりする
- 眠れない:不眠や睡眠の質の低下を経験する
- 気持ちが不安定:感情の起伏が激しくなる
- 集中力の低下:仕事や学業に集中できなくなる
- 疲労感:通常以上に疲れを感じる
- 社交性の低下:人付き合いを避けたくなる
これらの症状は、個人によって異なり、月経周期ごとに症状の強さや種類が変化することもあります。また、自覚していない症状もあります。
検査は何をするの?
血液検査など特定の検査は不要で、2回以上連続で月経前に症状がある場合に、臨床的に診断します。
月経前症候群と思えても、実はうつ病・不安障害・甲状腺機能低下症・心的外傷後ストレス症候群などの疾患が原因の可能性もあるため、必要に応じて検査を追加して行います。
※特定の血液検査や画像検査はPMSの診断に必須ではありませんが、他の疾患を除外するために必要に応じて実施されることがあります。
治療は何があるの?
治療法の第一は対症療法になります。
具体的には
頭痛・下腹部痛・乳房痛といった痛みに対しては鎮痛剤、
むくみに対しては、利尿薬、
不眠症に対しては、場合によっては睡眠薬、
吐き気に対しては制吐剤、
腹部症状に対しては整腸剤をといった処方を行います。
また日常生活の中で、
- 大きな予定を避ける
- 適度な運動
- ビタミンの摂取
また、症状に応じて
といった工夫をすることも推奨しています。
症状が中等度以上の場合は、日常生活に大きな支障をきたすため、
- 経口避妊薬
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
といった薬剤を使用します。
特に経口避妊薬は、ホルモンバランスを直接整えるため症状の改善が見られやすく使用機会が多いですが、現在のところ、月経前症候群という疾患に対してのピルの保険適応はありません。
他には漢方薬を使ったアプローチを用いることもあります。
低用量ピルでホルモンバランスを整える
月経関連の悩みに対して低用量ピル(時に漢方薬と併用)でコントロールができる場合があります。
サプリメントによる症状改善
トコエルというサプリメントを当院で取り扱いしております。
トコエルには、2つのビタミンE(γ-トコフェロール、γ-トコトリエノール)、エクオール、カルシウムの4つの成分が含まれており、
これらにより月経前の、
- むくみ
- イライラ
- 落ち込み
といった症状の改善効果があるとされています。
価格は:1,296円(税別、1ヶ月、7日分)です。気になる方は受診時にお気軽にご相談ください。
月経前不快気分障害(PMDD)
PMSとの違いは???
PMDD(月経前不快気分障害)は、PMSの重症型とされる疾患です。PMSと比較して、特に精神的症状が顕著で、日常生活に深刻な影響を及ぼします。
- 重度の気分の変動
- 極端な気分の落ち込み
- 絶望感
- 自己嫌悪感
- 不安感の増大
- 顕著な怒りや過敏性
- 激しい怒りの爆発
- 対人関係のトラブルの増加
- 些細なことに過剰に反応する
- 興味や意欲の著しい低下
- 仕事や学業への興味喪失
- 社交活動からの引きこもり
- 日常的な活動への無関心
- 集中力の低下
- 仕事や学業のパフォーマンスの著しい低下
- 決断力の欠如
- 身体症状の悪化
- 極度の疲労感
- 食欲の著しい変化(過食または食欲不振)
- 睡眠障害(不眠または過眠)
- 身体的な制御感の喪失
- パニック発作
- 身体が自分のものではないような感覚
これらの症状は、月経前の1〜2週間に集中して現れ、月経開始とともに急速に改善するのが特徴です。PMDDの症状は、個人の社会生活、職業生活、対人関係に重大な支障をきたすほど深刻なものとなります。
治療はどうするの???
月経前症候群と重なる部分もありますが、より精神的な側面へのアプローチが必要なため、
薬剤を使用した治療となることがほとんどです。
参考文献:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会
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