tth
緊張型頭痛
どれくらいの人が発症している?
緊張型頭痛(Tension-Type Headache, TTH)は、一次性頭痛の中で最も一般的なタイプであり、生涯有病率は30~78%と報告されています。特に慢性緊張型頭痛(Chronic Tension-Type Headache, CTTH)は2~5%とされ、頻度は低いものの、日常生活への影響が大きいとされています。
どんな症状があるの?
30分~7日間持続する頭痛で、両側性に後頭部を中心に頭全体的に締め付け感(非拍動性)中等度の頭痛があり、日常的な動作(歩行、階段昇降)により増悪せず、悪心や嘔吐はなく、光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみのことが多いです。
夕方や週末にかけて増悪する。肩や首こりを伴い、目の痛み、浮遊性のめまいや疲労感を伴う。温めると改善する。日常生活支障が出ることは少ないです。
緊張型頭痛になる原因は?
- ストレス:
- 仕事や家庭生活、人間関係などでのストレスが主な原因の1つです。
- ストレスによって頭部や頸部の筋肉が緊張し、それが持続することで頭痛が引き起こされます。
- 姿勢の問題:
- 長時間のデスクワークや、スマートフォンの使用など、不適切な姿勢が続くことで頭痛が発生する可能性があります。
- 頸部や肩の筋肉の緊張が持続し、それが頭痛につながります。
- 睡眠不足: - 睡眠の質や量の低下は、緊張型頭痛の発症リスクを高めます。
- 睡眠不足によって筋肉の緊張が高まり、頭痛が引き起こされます。
- 感情的ストレス: - 不安や抑うつなどの感情的ストレスも、緊張型頭痛の原因となります。
- ストレスによる筋肉の緊張が持続し、頭痛につながります。
- 遺伝的要因:
- 緊張型頭痛には遺伝的な素因が関与している可能性があります。
- 家族歴のある人は、緊張型頭痛を発症しやすい傾向にあります。
緊張型頭痛が起こる仕組みは?
精神的あるいは身体的ストレスにより後頸部の筋肉が緊張し頭痛が起こると考えられています。
発生頻度により、緊張型頭痛は以下のように分類されます。
- 反復性緊張型頭痛1ヵ月に15日未満
- 稀発緊張型頭痛 1ヵ月に1日未満(年間12日未満 )
- 頻発反復性緊張型頭痛1ヵ月に1日~14日まで(年間12日以上180日未満)
- ②慢性緊張型月に15日以上の(年間180日以上)反復性緊張型頭痛は末梢性要因(頭のまわりの筋肉の異常)が役割を果たしており、筋の緊張が亢進して痛みに敏感になっていると考えられています。
一方、慢性緊張型頭痛においては中枢性要因(脳の筋肉の緊張コントロールや痛みを感ずるシステムの異常)が関係しているといわれております。要因として筋肉をリラックスする能力に欠け,かつ痛みに感じやすくなっているためであると考えられています。
どうやって診断するの?
緊張型頭痛の診断には、主に以下のような検査が行われます。
- 問診
- 頭痛の症状、発症時期、持続時間、強さ、部位などの情報を詳しく聞き取ります。
- 頭痛の誘因となるストレス、生活習慣、既往歴などの情報も収集します。
- 身体診察
- 頭部、頸部、肩の筋肉の触診を行い、筋肉の緊張や圧痛の有無を確認します。
- 神経学的な異常がないことを確認します。
- 画像検査
- CTスキャンを行い、頭痛の原因となる器質的な異常がないことを確認します。
- 脳腫瘍や脳血管障害などを除外する目的で行います。
- 頚部のX線でstraight neckも参考になります。
どんな治療法があるの?
A)生活指導局所を温める。
入浴・ホットパック・マッサージ。姿勢を正し、軽いストレッチなどの肩こり体操をする。適度の運動は有効です。枕を低く、無くてもいいが、バスタオルなども2-3枚折って枕の替りとする。
B)薬物療法
急性期には鎮痛剤、抗不安薬、筋弛緩剤を使用します。慢性期には予防薬としてアミトリプチリンやSSRIなどの抗うつ薬を使用することがあります。
急性期治療は?
- 痛み止め(NSAIDs)
- アセトアミノフェン(500mg):比較的副作用が少なく、最初に試される薬剤の一つです
- イブプロフェン(200-800mg):効果の発現が早く、炎症も抑える作用があります
- ロキソプロフェン(60mg):日本でよく使用される薬剤で、筋肉の緊張もほぐす効果があります
- ナプロキサン(300mg):効果が長く持続するのが特徴です
- ジクロフェナク(25mg):強い痛み止め効果がありますが、胃への負担に注意が必要です
- リラックス効果のある薬(抗不安薬) 頭痛に伴う不安や緊張を和らげる目的で使用することがあります。医師の判断のもと、適切な量が処方されます。
- 筋肉の緊張をほぐす薬(筋弛緩薬) 首や肩の筋肉の緊張を和らげることで、頭痛の軽減を図ります。
- チザニジン:就寝前の服用で、朝までの筋緊張の緩和が期待できます
- エペリゾン:日中の筋肉の緊張を和らげる効果があります
- 漢方薬
- 五苓散:むくみや頭重感を改善する効果が期待できます
などを使用します。
慢性期治療は?
- 抗うつ薬
- アミトリプチリン:最も効果が確認されている予防薬の一つです。頭痛予防に必要な量は、うつ病の治療で使用する量よりもずっと少ない量で効果が期待できます。
- セロトニンに作用する薬(SSRI・SNRI)
- パロキセチンなど:神経伝達物質の働きを調整することで、頭痛の発生を予防します。不安やうつ症状も同時に改善する効果が期待できます。
- 抗てんかん薬
- トピラマート(50-200mg):脳の過剰な興奮を抑える作用があり、頭痛の予防効果が期待できます。少量から開始し、徐々に適切な量に調整していきます。
- 漢方薬 体質や症状に合わせて、適切な漢方薬を選択することで、長期的な頭痛予防が期待できます。
※これらの予防薬は、すぐに効果が現れるわけではなく、効果が出るまでに1~2ヶ月程度かかることがあります。また、予防効果を得るためには継続的な服用が必要です。
薬剤以外の予防法は?
①頭痛体操
②枕低くする
といった方法が有効です。
1. 肩まわし体操
肩僧帽筋の緊張をほぐし、血行を改善する体操です。
方法:
- 足を肩幅に開いて立つか、椅子に座ります。
- 両ひじを90度に曲げ、肩を中心にして「上着を脱ぐ」ような動作で肩を前から後ろへ大きく回します(5回)。
- 次に「リュックサックを背負う」ような動作で肩を後ろから前へ大きく回します(5回)。
- これを2セット(合計20回)行います。
ポイント:
- 肩を大きく動かし、ゴリゴリと音が鳴るくらいが理想的です。
- 首を回す動作は避け、肩の動きに集中しましょう。
2. コマ体操
首や肩のインナーマッスルを動かし、血流を促進する体操です。
方法:
- 足を肩幅に開き、頭を動かさずに両肩を大きく回します。
- 頸椎を軸にして肩を左右に90度まで回転させ、リズミカルに2分間続けます。
- 椅子に座って行う場合も同様に、頭を正面に向けたまま肩を交互に前に突き出すように回転させます。
ポイント:
- 頭を動かさず、体の軸を意識して行うこと。
- リラックスした状態で行い、1日2分程度で十分です。
3. 頸椎クルクルトントン
首の筋肉をリセットし、緊張を和らげる体操です。
方法:
- 楽な姿勢で座り、首を下に曲げたときに浮き出る頸椎の骨を両手で軽く押さえます。
- その状態で「YES」とうなずくように頭を上下に小さく動かします(10回)。
- 次に「NO」と首を左右に小さく振る動きを行います(10回)。
ポイント:
- 筋肉を意識せず、リラックスした状態で小さな動きで行うこと。
- 血行を促進し、首の動きがスムーズになる効果が期待できます。