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低髄液圧性頭痛

低髄液圧性頭痛の図

低髄液圧性頭痛とは

低髄液圧性頭痛は、脳脊髄液(髄液)が何らかの原因で漏出することにより、起立時の頭痛を主症状とする症候群です。40歳前後での発症が多く、女性は男性の3倍の割合で発症することが知られています。近年では「脳脊髄液減少症」という呼び方も一般的になってきています。

発症の仕組み

通常、髄液圧は横向きの状態(側臥位)で頭蓋内および腰椎レベルともに10~15cmH2O程度に保たれています。しかし、立位になると腰椎レベルでは40cmH2O程度まで上昇し、頭蓋内では逆に陰圧になることがあります。

髄液腔を包む硬膜やくも膜に何らかの理由で穴が開くと、髄液が漏れ出し、その結果として脳が下方に移動(沈下)します。これにより脳神経、脳血管、頭蓋底の硬膜が牽引されて刺激を受け、特徴的な起立性頭痛が引き起こされます。

原因は何?

低髄液圧性頭痛の原因として、以下のようなものが考えられます:

  • 外傷性:交通事故、スポーツ外傷、転倒・転落による脊髄周囲の組織損傷
  • 医原性:腰椎穿刺後(処置を受けた方の最大3分の1に発生の可能性)
  • その他:
    • 出産
    • 激しい咳やいきみ
    • 気圧の急激な変化
    • ビタミンA欠乏(髄液産生の低下)

どんな症状があるの?

主な症状には以下のようなものがあります:

  • 起立性頭痛(立ち上がって15分以内に出現し、横になると30分以内に改善)
  • 頚部痛や腰痛
  • 耳症状(耳鳴り、聴力低下)
  • 視覚症状(視野の異常、光過敏)
  • 吐き気・嘔吐
  • めまい
  • 集中力低下
  • 記憶力の低下

どうやって診断するの?

日本頭痛学会の最新の診断基準に基づき、以下の点を確認します:

  1. 特徴的な起立性頭痛の存在
  2. 画像検査での確認
    • MRIでの硬膜肥厚や造影効果
    • CT脊髄造影や脳槽シンチグラフィーでの髄液漏出の確認
  3. 髄液圧測定(必要な場合)

治療方法は?

治療は段階的に行われ、症状や重症度に応じて以下の方法が選択されます:

保存的治療(初期治療)

  • 十分な安静
  • 適切な水分補給
  • 輸液療法(1日1000~1500mL)
  • 鎮痛薬・消炎鎮痛薬の使用
  • カフェイン摂取
  • 腹帯の使用

専門的治療

  • 硬膜外自家血注入(ブラッドパッチ)
    • 患者様自身の血液を硬膜外腔に注入する治療
    • 通常3~7日程度の入院が必要
    • 1回で効果が不十分な場合は、間隔をあけて複数回実施することもあり

予後と経過

症状の経過には個人差があり、髄液漏出から症状出現までの時間も患者様によって異なります。適切な診断と治療により、多くの場合症状の改善が期待できます。

【参考資料】

日本頭痛学会診療ガイドライン

日本神経学会診療ガイドライン

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